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幽玄について (続)

前回のブログは余韻を持って終えたつもりだったが、その後、書き加えたいことが出て来た。

前回ブログの文末の歌

春の夜の夢の浮橋と絶えして峰にわかるる横雲の空

の風景はどのようなものだろうか。
山頂が雲に覆われた景色、がイメージされるだろう。
この景色はどこかで見たものと共通していないだろうか。
そう、前回ブログの最初に登場した

田子の浦にうち出でてみれば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ

の肉眼で見える風景によく似ている。
どちらも雲が低い位置にあって、山の頂が隠されて、見通しが利かない状況である。

「田子の浦」の歌では、ズームインした視点から、雲に隠されて見えない山頂で起こっているであろうことを心眼で見、想像の華を詠み込んでいる。
一方、「春の夜の」の歌では、ズームアウトした視点から空全体を視野に入れて、雲に覆われた山の峰を遠望し、その中で芽生えているかも知れないことを予感しつつも、今は距離を置いて余韻を味わっている風情がある。
前者が積極的に物語の渦中に入り、主観的な視点で見ているのに対し、後者は物語の渦中から身を引き、客観的な視点で見ているようだ。

「幽玄」には主観、客観ふたつの視点がある。
時には登場人物と一体化して喜怒哀楽を共にして興じ、疲れた時には舞台から身を引いて舞台全体を眺める。
自由自在に自身の心の在り位置を変え、活動と休息を繰り返す。
身を引いた休息がある故に、舞台のエッセンスを本当に味わい、楽しむことが出来る。

「幽玄」とは、「人生」という言葉の言い換えのひとつかも知れない。
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テーマ : モノの見方、考え方。
ジャンル : 心と身体

プロフィール

迷林亭主

Author:迷林亭主
迷林亭主ことカウンセリングルーム・メイウッド室長 服部治夫。
三鷹市の住宅地に佇む隠れ家的なヒーリグ・スペース。
古民家を改装したくつろぎの空間で、アートセラピーや催眠療法などを活用し、カウンセリングやヒーリング、創造性開発の援助に取り組んでいます。

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