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チリ鉱山の救出劇に思う

サンホセ鉱山の落盤事故で地下700mに2ヶ月10日間閉じ込められた33人が全員無事救出された。
当初は救出まで4ヶ月かかると目されていたが、世界中から応援を得て、より短期間で全員が無事に生還出来たことは本当に良かったと思う。
落盤事故発生から17日後に33人全員が生きていることが判明した時点から救出に到るまでが実にドラマチックで感動的だった。

私はこのサンホセ鉱山救出プロジェクトを見ながら、かつて私が勤務していた会社で起こった誘拐事件のことを思い出していた。
今から20年近く前のこと、コロンビアに出張していた社員2名が反政府ゲリラ組織に誘拐され、4ヶ月間自由を奪われていたのだ。
その時、担当事業部門の営業部長が救出活動の陣頭指揮を執るためにずっと現地に張り付いた。
当該事業部門の内部では、営業部長が通常の業務を投げ打って現地に行った切りになっているのに対して批判的な声もあったようだが、私は、会社が社員を見捨てずに救出活動に専心してくれている姿勢がまざまざと見え、心熱くなるものを感じた。
私だけでなく、多くの社員が営業部長の行動に共感していた。

コロンビアの誘拐事件でも、チリの落盤事故でも、沢山の人々が窮地に陥っている仲間を助けようと心を寄せ合っている姿が共感を呼ぶし、窮地にある人達の、救済者を信頼し、生還への希望を失わない強い姿がまた共感を誘う。
私達がドラマの主人公達に感情移入し、自分が独りではない、見捨てられていない、必ず救われる、という実感を共有することによる感動なのだろう。

そういう感動が得られるのは、これらの出来事が注目を集める非日常的な出来事だからだ。
非日常的な出来事だからこそ、いつかは終わりが来るとの希望が持て、強い精神力を発揮することが出来るのだ。

日常的な世界では、比喩的な意味で、地下深く閉じ込められ、自由を奪われたように感じて生活している人々が無数にいることと思う。
しかし、彼等は日常生活の中に溶け込んでいるため、人々の注目を集めることがない。
従って、見捨てられ、置き去りにされたように感じ、孤立している。
そして、その状況から脱出することへの希望を持つことが出来ない。

本当の悲劇は、スポットライトの当たる舞台の上ではなく、静まり返った観客席の中に拡がっているのだ。

日常の罠は、良くも悪しくもそれがいつまでも永久に続くと思わせてしまう。
日常の罠から脱却する方法、それは、日常の出来事を異化し、非日常の出来事として認知すること。
ドラマはどこにでも存在している。
そして、その「非日常のドラマ」から脱出するプロジェクトを組織することだ。

こうした認知の変換はカウンセリングによって可能となる。
しかし、それは量的にはミクロのレベルに過ぎない。
マクロのレベルでの救済を可能とするためには何らかの社会的な取り組みが必要になる。
それはどのような取り組みだろうか。
と言うようなことを考えながら、今日もまた、ミクロなレベルの仕事に取り組んでいる。
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テーマ : 「生きている」ということ
ジャンル : 心と身体

プロフィール

迷林亭主

Author:迷林亭主
迷林亭主ことカウンセリングルーム・メイウッド室長 服部治夫。
三鷹市の住宅地に佇む隠れ家的なヒーリグ・スペース。
古民家を改装したくつろぎの空間で、アートセラピーや催眠療法などを活用し、カウンセリングやヒーリング、創造性開発の援助に取り組んでいます。

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