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フラジャイル

2011年3月11日14時46分。私は仕事を終え、三鷹駅近くのイタリアンレストランで遅めのランチを食し、食後のコーヒーを飲んでいるところだった。
グラグラと始まった揺れは次第に激しくなり、一向に収まる気配が無い。
直ぐ近くのペンダントの電球がチカチカ点滅し、ワインのビンが床に落ちて割れる。
店全体がミシミシと揺れている。
私は店の従業員に促されて、階段を下り、屋外に出た。
路上に立っていても、まるで船に乗っているみたいにユラユラ揺れて、いつものように大地にしっかり立っている実感が完全に失われている。
不気味に曇った空を背景に、信号が、電線が、ユサユサと揺れ、いつの間にか異次元の空間に投げ込まれてしまったように感じる。
路上には退避した大勢の人達が立ち、不安そうに空を見上げている。
立ち並んだ建物の裏手で黒い煙が立ち上っている。
消防車のサイレンの音・・・。

先日、六本木ヒルズで開催された小谷元彦展で『インフェルノ』というインスタレーションに入った時、「宇宙に佇つ」ことの実態と感覚の差、不安定感と慣れを実感したが、3月11日には、それを現実の大地で実感することになった。
私達が生活している日本列島は大変フラジャイルだ。
しかし、それは同時にとてもダイナミックで創造性に満ちている。
森林に覆われた緑の自然、豊かな水、肥沃な土地、豊富な水産資源、各地に見られるさりげなくも美しい風景、随所に湧き出る温泉・・・。
日本列島は世界中で最も人が住みたいと思う自然環境を有した土地のひとつだ。
しかし、一方では、地震、津波、台風といった自然災害も多い、ハイリスク・ハイリターンの土地である。
そのハイリスク・ハイリターンの国に生きて来たことが日本人の心性に大きな影響を及ぼしているのではないだろうか。
穏やかで豊かな自然に囲まれた生活で育まれた優しさや和の心。
厳しい自然災害に対処するために身に付けたしなやかな強さと助け合いの心。
この日本列島を落ち着き所として選択した私達の祖先のDNAが私の中に在ることをしかと感じる。
私はこの日本で生きて行く覚悟と喜びを今までになく強く感じている。

今、被災地の方々が切実に感じておられるのは「生存の欲求」と「安全の欲求」だ。
当面の間、私として被災地の方々に出来る支援は募金をしたり、節電をしたり、物の買い占めを控えたりすることに留まるかも知れない。
しかし、このような時こそ、一人一人の人が必要以上に情緒に流されずに目前にある自分の仕事に専念することが大切だと思う。
一人一人の仕事の積み重ねが回り回って被災地の方々の助けにつながるものと信じる。

今は正に戦時中の非常時だが、この非日常はしばらくの間、日常となろう。
私は祖先が獲得した無常感というコンセプトをむしろ肯定的に生きて行きたいと思う。

テーマ : 「生きている」ということ
ジャンル : 心と身体

プロフィール

迷林亭主

Author:迷林亭主
迷林亭主ことカウンセリングルーム・メイウッド室長 服部治夫。
三鷹市の住宅地に佇む隠れ家的なヒーリグ・スペース。
古民家を改装したくつろぎの空間で、アートセラピーや催眠療法などを活用し、カウンセリングやヒーリング、創造性開発の援助に取り組んでいます。

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