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開かれた静物画 - フェルメール《地理学者》

Bunkamuraミュージアムで開催中の『フェルメール《地理学者》とオランダ・フランドル絵画展』を観た。

若者で賑わう渋谷駅前から東急本店通りをユルユルと上って来てBunkamuraの辺りに来ると時間の流れがゆっくりとした別世界に入ったような気がする。
ここは渋谷であって渋谷ではない。
「渋丘」というところか。

ヤン・ブリューゲル父子やその仲間の画家が描く風景画は美しい。
特に遠景の青緑のグラデーションが魅力的で絵の奥の世界に吸い込まれそうになる。
これらの風景画に於いては、画面の外(手前)から内(奥)へ向かう力動が働いているのを感じる。

一方、暗い背景を伴って描かれる肖像画の数々には迫真の力が秘められている。
描かれた人物の視線はこちらへと、画面の外側へと強く注がれている。
これらの肖像画に於いては、画面の内(奥)から外(手前)へ向かう力動が働いているのを感じる。

ド・ヘーム父子を始めとする画家達が描いた写実的な静物画には不思議な魅力がある。
画家は画面空間の中に趣向を凝らして様々な物を散らし置き、観る者に謎を仕掛ける。
それは私達の美的感覚と知的興味を刺激し、ひとつの完結したヴァーチャルな世界を提示するようだ。
そこには、画面の内に向かう力動も外に向かう力動も無い。
静物画(still life)の「still」と言うのは、内への動きも外への動きも無く、そこに止まっているからそう呼ばれるのかも知れない。

今回の展覧会のハイライトであるフェルメールの《地理学者》は人物が描かれているが、その人物自体を主体とする肖像画ではない。
画面の中に散らし描かれた様々な物と人物の組合せが私達に美と知的興味を惹起させる点で、この絵の印象は静物画に近い。
しかし、静物画のように静的に止まっているのではない。
この絵は私達を絵の中に引き込む力を持っていると同時に、絵の中の人物が画面の外へとせり出して来る力を感じる。
その内と外への力動が微妙なバランスを取って画面上で止まっている。
つまり「ダイナミックな静物画」と言う印象なのだ。

地理学者は地図を見て、どこか見知らぬ土地に思いを馳せている。
彼の身体は室内に在るが、精神は外の世界に在る。
彼が着ているガウンの青は海の色、空の色、そして精神の色。
その青はヤン・ブリューゲルの風景画の遠景のように、私達を絵の中の世界へと誘う。
そして、私達は地理学者に触発されて改めて外の世界に思いを向ける。
静物画のようにそれだけで完結した絵ではなく、未完で画面の外に開かれている。
それは正に「開かれた静物画」と言えると思う。
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テーマ : 美術館・博物館 展示めぐり。
ジャンル : 学問・文化・芸術

プロフィール

迷林亭主

Author:迷林亭主
迷林亭主ことカウンセリングルーム・メイウッド室長 服部治夫。
三鷹市の住宅地に佇む隠れ家的なヒーリグ・スペース。
古民家を改装したくつろぎの空間で、アートセラピーや催眠療法などを活用し、カウンセリングやヒーリング、創造性開発の援助に取り組んでいます。

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