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真摯な問い - 『ソフィ カル 最後のとき/最初のとき』

JR品川駅を出て、国道15号沿いに御殿山のゆるやかな坂を上る。
緑深い歩道。
半年ぶりに原美術館に向かう。
梅雨時らしい曇り空。
曇り空は人を思索的にする。

『ソフィ カル 最後のとき/最初のとき』
ソフィ カルのように視覚に基づいた制作活動をしている美術家にとって、生まれつき目の見えない人にとっての美とは何か、という問いは、自分の存在の根源に関わる真摯な問いであって、恐らく固唾を飲んで答えを待ち受けたのではないだろうか。
「私が見たもっとも美しいもの、それは海です」という盲目の男性の答え。
とても啓示的で深い素敵な答え。
ギャラリーⅠの展示こそ本展覧会の白眉である。

海は人類を含むあらゆる生命の故郷であり、また、死後、全てを飲みこんで再生の準備をする場所でもある。
つまり、海こそが人生の最後のときと最初のときを包摂するものだ。
見えなくともその海を美しいと感じ、魂が受け入れている。
それはその男性が全てのときを包摂したこの世の人生の今というときをきちんと実感を持って生きているからに違いない。
彼は眼ではなく魂で海を見ているのだ。

「海を見る」
12編の映像の空模様は曇り。
そして振り返った男達の顔は何故か皆思索的。
女達や子供達からは笑みがこぼれている。
きっと思索と笑みを統合したところに
海を美しいと感じ、受け入れる魂が在るのだろう。

「最後に見たもの」
13人それぞれの心に残る物語。
それは人を活かす力を持った物語だ。
例えば、木洩れ日射す緑の草原の上に、
鮮やかなピンクの長袖シャツを着て金色のスカーフを巻いて坐る若い女性。
語り手達の静謐さには今このときを本当に生きている確かさが在る。
そして観ている私にも人生を生きる意味を改めて感じさせてくれる物語。
魂を強くする物語。

ソフィ カルの真摯な問いは私にとっても真摯な問いであった。

テーマ : 美術館・博物館 展示めぐり。
ジャンル : 学問・文化・芸術

プロフィール

迷林亭主

Author:迷林亭主
迷林亭主ことカウンセリングルーム・メイウッド室長 服部治夫。
三鷹市の住宅地に佇む隠れ家的なヒーリグ・スペース。
古民家を改装したくつろぎの空間で、アートセラピーや催眠療法などを活用し、カウンセリングやヒーリング、創造性開発の援助に取り組んでいます。

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