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魂の自由への階梯 - 『貴婦人と一角獣展』

国立新美術館で開催中の『貴婦人と一角獣展』を観た。

謎の絵《我が唯一の望み》が何を意味するかについては、TV放送でも解釈がされていて、おそらく発注者の意図はそうなのであろうが、6枚のタピスリーを実際に眼にしたところ、予想以上に豊富なメッセージが飛び込んで来て驚嘆した。

会場に入って、眼を薄っすら開けて、並んだタピスリーをぼんやり眺めると、ミル・フルールを配した朱色の地が星空に、図となる人物や動物が星座のように見える。
並んだタピスリー群が何か宇宙的な秩序を暗示しているかのように感じられるのだ。

《触覚》
四足の動物のほとんどは首輪や胴輪で拘束されている。
自由なのはうさぎと鳥だけだ。
一角獣と獅子は盾を身にまとい、地面に四肢を着けて、かしこまっている。
貴婦人は旗竿と一角獣の角を支えとして気丈に立っているが、その表情は硬い。
絵全体からは不自由で閉ざされた雰囲気が感じられる。
触って確かめられる範囲しか世界が開けていない。

《味覚》
動物達は全ていましめを解かれ、自由を取り戻している。
一角獣と獅子はマントを翻して後ろ足立ちで精いっぱい伸び上がっている。
貴婦人は侍女を伴に得て、穏やかな表情で手に乗った鳥を見ている。
絵に動きが表れ、閉ざされた雰囲気は一掃されている。
画面はとても優美だが、どこか憂いがある。 
躍動し始めた世界を味わい、享受しているが、未だ本当の喜びには程遠い。

《嗅覚》
動物達は魔法を掛けられたように立ち止まっている。
一角獣と獅子は再び盾を身にまとっているが、余裕ある表情で、静かに旗竿を支えている。
貴婦人は花冠を編む手作業に集中している。
画面は再び静かになるが、緊張感は解かれ、画中の人物や動物達は花のかぐわしさに世界の豊かさを感じているようだ。
貴婦人は創造の喜びに目覚め、その心は活き活きしている。

《聴覚》
動物達は自分の意思で自由に動き始める。
一角獣と獅子はもはや何もまとわず、思い思いの姿勢で旗竿を支え、耳を傾ける。
貴婦人は一心不乱に携帯オルガンを弾く。
その表情は静謐さに満ちている。
美しい音楽の調べに、画中の人物や動物達は世界の深さを感じ、安心しているようだ。

《視覚》
画面はコンパクトでシンプル。
樹木も2本のみで、侍女の姿も見えない。
動物達の見せる親密な語らい。
そして、貴婦人と一角獣の親密な一体感。
視覚が開け、良く見えるようになった世界の本質は実はシンプルなもの。
安らぎの中で豊かに育まれ、準備の出来た心は、ここで自分自身と向き合う。

《我が唯一の望み》
広々とした画面に再び豊富な形象が戻って来る。
動物達は自由闊達に思い思いの姿勢を楽しむ。
一角獣は絶対の信頼感を持って貴婦人を見詰める。
画面の中央に現れた青い天蓋。
これは自分自身と出会い強くなった貴婦人の心が創り出したもの。
彼女は自分の意思で中に入ることも外に出ることも出来る。
侍女が差し出す宝石箱。
ここから宝飾品を出して身に着けるのも、ここに宝飾品を戻すのも貴婦人の心次第。
彼女の魂は自由だ。

感受性に富んだ画家は、依頼を受けた6枚の絵に自分が得たインスピレーションを籠めたに違いない。
一角獣は貴婦人の分身であり、貴婦人の心の形象化と捉えることが出来る。
それぞれの絵で解釈した貴婦人の心は一角獣の姿態で表されている。
6枚の絵は魂が自由を獲得して行くプロセスを表現している。
従って、画家にとって《我が唯一の望み》とは「魂の自由」に他ならなかったのではないか、と思う。
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テーマ : 美術館・博物館 展示めぐり。
ジャンル : 学問・文化・芸術

プロフィール

迷林亭主

Author:迷林亭主
迷林亭主ことカウンセリングルーム・メイウッド室長 服部治夫。
三鷹市の住宅地に佇む隠れ家的なヒーリグ・スペース。
古民家を改装したくつろぎの空間で、アートセラピーや催眠療法などを活用し、カウンセリングやヒーリング、創造性開発の援助に取り組んでいます。

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