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聖なる母胎 - ジョルジュ・ルオーの風景

パナソニック電工汐溜ミュージアムで開催中の『ルオーと風景』展を観た。

ポスターになっている初期の風景画『人物のいる風景』の実物を観た時、その女性性に眼を奪われた。
ぼんやりした月の光、水辺、水浴するニンフ達、丸い樹影、暗く不分明な形象。
その姿は余りにも女性的なもの、母なるものを思わせる。
「世界のどこにもない景色が、ここにあります。」というコピーは正しい。
それは、ルオーの心の地(じ、ground)なのだ。

『ゲッセマニ』では、眠る弟子達の姿は岩と溶け合い、暗く不分明な背景と一体化している。
この絵では、イエスだけが図で、弟子達は地の一部に過ぎない。
ルオーは聖なる人物とその他の人物を明確に描き分けている。

『風景、乗馬』の丸い縁取りは教会のバラ窓を想わせる。
背景の深い青は、シャルトルのノートルダム寺院のステンドグラスを通して射し込む陽光のようで、深い精神性を感じさせる。

本当は燦々と輝く日光で眩しい『ブルターニュの風景』がルオーが描くと暗く深い輪郭を持った絵に変容する。
この風景もルオーの眼のステンドグラスを通して、その精神的なエッセンスだけが厳しく絞り込まれて抽出されたように見える。

若い頃、レンブラントに傾倒し、レンブラントの再来と言われたルオーだが、彼がレンブラントに触発されて得たものは、闇と言う母胎に射し込む精霊の光と言うイメージではないかと思う。
つまり、それはルオー流の受胎告知のイメージなのだ。

ルオーの晩年の絵に繰り返し表現される構図、小暗い風景の中で中空に浮かぶ丸い天体の光に照らされた人物像。
小暗い風景は母胎、丸い天体は精霊、そして受胎によって生まれ出た聖なる人物達。
丸い天体はルオーの心の中に灯った光の投影のようにも見える。
精霊は遍在しているからだろう、画家の心の内にも外にも。

風景の暗さは天体の光がステンドグラスを通して絞り込まれたからだろう。
この風景は教会の中の聖なる空間、聖なる母胎なのだ。

ルオーにとって、教会は寺院建築を超えて存在していた。
貧者の住む場末にこそ本当の教会が在った。
『郊外のキリスト』に充ちた穏やかさ。
神の恩寵は遍くところに届いている。
『悩みの果てぬ古き場末で』は聖母子が美しい深く印象的な絵。

『伝説的風景』の中の『キリストと渡り職人』にルオー自身が付けた詩;

「イエスはなお
愛と隣人愛をもって
息切れしそうなこの心を
優しい胸から引き離さずに隣人の心にしみいる

イエスは神秘である
イエスの名のもとに消耗し
興奮する者たち全員に
イエスは自らの平安を与えたいと願う
イエスは貧しき者の心の中にいるのを好む」

ジョルジュ・ルオーは近代に於ける最高の宗教画家だと思う。
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テーマ : 美術館・博物館 展示めぐり。
ジャンル : 学問・文化・芸術

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プロフィール

迷林亭主

Author:迷林亭主
迷林亭主ことカウンセリングルーム・メイウッド室長 服部治夫。
三鷹市の住宅地に佇む隠れ家的なヒーリグ・スペース。
古民家を改装したくつろぎの空間で、アートセラピーや催眠療法などを活用し、カウンセリングやヒーリング、創造性開発の援助に取り組んでいます。

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